はじめに
2026年6月17日、改正ドローン規制法(正式名称:重要施設の周辺地域の上空における小型無人機等の飛行の禁止に関する法律の改正)が参議院本会議で可決・成立しました。
この法改正により、重要施設周辺の飛行禁止エリアが**従来の約300メートルから約1キロメートル(1,000m)**へと大幅に拡大されます。
ドローンを業務や趣味で活用されている方、あるいはレンタルドローンを検討中の方にとって、非常に重要な変更です。本記事では、法改正の背景・内容・実務への影響を事実ベースでわかりやすく解説します。
1. 改正の対象となる法律
今回の改正対象は**「小型無人機等飛行禁止法」**(平成28年法律第9号)です。航空法とは別の法律である点にご注意ください。
- 航空法:国土交通省管轄。飛行高度・空域・機体登録・操縦ライセンスなどを規定
- 小型無人機等飛行禁止法:警察庁管轄。重要施設の安全確保を目的に、特定施設上空と周辺の飛行を規制
どちらの法律に違反しても罰則が科されますが、管轄省庁・手続き窓口・罰則内容が異なります。
2. 改正前の規制内容(現行法)
現行の小型無人機等飛行禁止法では、対象施設の上空(レッドゾーン)と、その周囲おおむね300メートル以内(イエローゾーン)が飛行禁止区域とされています。
対象施設(主なもの)
- 国会議事堂・首相官邸
- 最高裁判所庁舎
- 皇居・御所
- 外国の大使館・領事館
- 政党事務所
- 自衛隊・在日米軍の施設
- 空港(国土交通大臣が指定するもの)
- 原子力関連施設
現行の罰則
イエローゾーン(300m内)での無許可飛行は、警察官等の**措置命令(退去命令)**の対象となり、命令に従わない場合に初めて罰則(1年以下の懲役または50万円以下の罰金)が科されます。
3. 改正の背景:なぜ1kmに拡大するのか
ドローン性能の急速な向上
300メートルという距離は、法制定当時(2016年)の技術水準を前提に設定されていました。当時、市販ドローンの映像伝送距離は市街地で200〜300メートル程度であり、「レッドゾーンに向けて飛行させる操縦者はイエローゾーン内にいる」という前提で、警察官が操縦者を発見・措置命令できる設計でした。
しかし現在のドローンは性能が大幅に向上しています。
- 映像伝送距離:500m〜10km超(機種により異なる)
- 携帯電話網を利用したエリア外からの操縦も可能
- 最高速度70〜100km/h以上の機体も登場
これにより、イエローゾーン外から操縦してレッドゾーン内を飛行させることが技術的に容易となり、警察が措置命令を出せない事態が生じていました。
テロ・妨害行為への対応
近年、ドローンを悪用したテロ・妨害行為が世界的に問題視されています。重要施設へのドローン接近事案も国内で報告されており、セキュリティ上の脅威として認識されるようになっています。
法改正の検討から成立まで
| 時期 | 経緯 |
|---|---|
| 2025年11月 | 警察庁が有識者検討会を設置し、法改正の方向性を報道発表 |
| 2026年3月24日 | 改正法案を閣議決定・国会提出 |
| 2026年6月17日 | 参議院本会議で可決・成立 |
4. 改正法の主なポイント
① イエローゾーンの拡大:300m → 約1km(1,000m)
最も大きな変更点です。飛行禁止の「イエローゾーン」が対象施設周囲おおむね**1,000メートル(1km)**に拡大されます。
半径1kmというのは、都市部では非常に広い範囲です。たとえば、これまで「施設の裏側なら大丈夫」だったケースでも、今後は「街区ごとNGになる」可能性があります。
② 直罰化(警察官の措置命令なしに罰則適用)
現行法では、イエローゾーンでの無許可飛行に対して警察官の措置命令を出し、それに従わない場合に初めて罰則が科されます。
改正後は、措置命令を経ずに直ちに罰則が科される仕組みになります(直罰化)。これにより、飛行を検知された時点でアウトとなります。
③ 対象施設の追加
改正法では、以下のような施設の追加が検討されていました。
- G7サミット等の重要国際会議の会場・準備期間中の施設
- 国内要人が出席する行事会場(必要な期間を定めて指定)
④ 100g未満のドローンも対象
小型無人機等飛行禁止法は航空法と異なり、機体の重量に関係なく規制が適用されます。航空法の対象外となる100g未満のトイドローンであっても、この法律の飛行禁止区域では飛行できません。
5. 施行日について(重要)
法案要綱によれば、一部を除き公布の日から20日を経過した日から施行される見込みです。ただし、施行日の正式な確定については公布後に官報等でご確認ください。
⚠️ 本記事執筆時点(2026年6月18日)では、成立から1日しか経過しておらず、公布日・施行日の正式発表が出ていません。随時最新情報をご確認ください。
6. ドローン利用者への実務的な影響
撮影・点検業務
- フライト前の現場調査で「半径1km以内に重要施設がないか」を確認することが必須になります
- これまで問題なく飛行できていた場所でも、新たに規制対象になる可能性があります
- 定期的に撮影を行う現場では、施設の指定状況を改めて確認してください
趣味・練習
- 公園や河川敷であっても、半径1km以内に対象施設がある場合は飛行禁止になります
- 特に都市部では大幅な影響が見込まれます
レンタルドローンをご利用の方
レンタルドローンをお借りの際も、飛行場所の事前確認は借りた人の責任です。法改正後は特に、飛行予定エリアの施設確認を徹底してください。
7. 飛行禁止エリアの確認方法
飛行禁止区域は以下の公式ツールで確認できます。
- DIPS 2.0(ドローン情報基盤システム) https://www.ossportal.dips.mlit.go.jp/portal/top/
- 地理院地図(国土地理院) 対象施設周辺の規制区域が視覚的に確認できます
ただし、新しい施設の指定や区域の変更があった場合は、最新の情報に更新されるまでタイムラグが生じることがあります。飛行前には必ず最新情報を確認する習慣をつけましょう。
8. 現行法との比較まとめ
| 項目 | 改正前 | 改正後 |
|---|---|---|
| イエローゾーン範囲 | 施設周囲おおむね300m | 施設周囲おおむね1,000m |
| 罰則の適用 | 措置命令後に不従の場合 | 無許可飛行の時点で直罰 |
| 対象施設 | 従来の施設 | 従来の施設+要人行事会場等を追加 |
| 100g未満の機体 | 対象(変更なし) | 引き続き対象 |
| 管轄 | 警察庁(変更なし) | 警察庁 |
おわりに
ドローンの性能向上がもたらす利便性と、それに伴うセキュリティリスクへの対応として、今回の法改正は一定の合理性があると言えます。一方で、これまで問題なく飛行できていた場所でも突然規制対象になる可能性があり、業務・趣味を問わずドローンを活用するすべての方に影響します。
「知らなかった」では済まされない直罰化も導入されますので、施行日前に今一度、飛行予定エリアの確認・見直しをお勧めします。
ドローンレンタルネットでは、ご利用の際に法規制に関するご相談もお受けしています。ご不明な点はお気軽にお問い合わせください。